この度，「腐食・防食ハンドブック」2000年版のCD-ROM版が出版・頒布されることになりましたことは大きな喜びであるとともに，作成に当たられた編集委員会の皆様には深甚なる敬意を表します．このCD-ROM版は書籍版をそのままCD-ROMに入れたというだけでなく，一部追加修正に加えCD-ROM版の特徴を生かせる付加措置も取られていて，書籍版を超えるものになっているといえます．電子情報化は時の流れではありますが，科学技術情報の記録保存と伝達は長い間紙面に依存してきたことを考えますと，大きな転回に着手したことになります。

紙面の文字を読むことに慣れてきた人にとってディスプレイの文字を読むことには抵抗があるかもしれません．しかし，パソコン音痴の部類に属する私でも最近はたとえば英語の単語を調べるのに本棚から辞書を取り出してページをめくるのとパソコンに入っている辞書を開くのが半々程度になってきています．パソコン世代の人にとってはハンドブックをパソコンで開くことは何の抵抗もないでしょうし，さらに出力データを自由自在に様々な形に加工して使用することになるでしょう．CD-ROM版は記録伝達方法の変化から利用方法の変化をもたらすものとも考えられます．

さらに，CD-ROM版の特徴である修正や追加が容易で，また大量の容量があるということは，今後の再版発行や編集に大きな影響を与えることになるでしょう．書籍版では考えられなかった新しいハンドブック利用方法が次々に考案され，利用に適した編集方針が提案されることになると思われます．従来の書籍版編集に囚われない新しいアイデアによるCD-ROM版ハンドブックの編集に発展して行くことを期待します．

今回のCD-ROM版発行は将来の大きな発展の一歩を踏み出したものといえます．

腐食防食協会　　
会長　林　安徳